グレーゾーンな30代独身派遣女子の日常

30代独身派遣女子の日常

元彼に日々振り回されています

倫理観のバグった人間の飲み方とは

私は倫理観がバグっているらしい。

これは、ルームメイトと暮らし初めて半年程経った頃に、投げられた言葉だ。

 

「会社の飲み会って嫌だよね」

そんな会話から始まった。

 

私は、お酌をしたり、先輩達をよいしょしたり、そういうことは苦痛に感じない。

コネを増やす意味では、都合が良いときもある。

ただ、メリットの無い人間ばかりが集まる飲み会が、とにかく嫌だった。

時間の無駄。面倒くさい。

そんな感じだ。

 

ルームメイトは、私とはまた違った理由から飲み会が嫌いなようだった。

 

彼女は私の考え方に疑問を抱く。

 

「え、お酌とか、おべっかとか嫌じゃないの?逆に、何が嫌なの?」

 

はて、飲み会の嫌な行為…

そんなことは考えたことが無かった。

 

回し飲みとかも、私は気にしないタイプだ。

でも、おじさん達が、そういう行為にドギマギ、時には望んでいることは気付いている。

 

何か減るもんでもなし。

私はそういう時、平気でグラスを共有する。

それで私へのポイントが上がるなら、それでいい。

それ以上も以下もない。

 

ただ、強いて言うなら、食べかけのものを共有するのは、あまり好きじゃない。

一度、そういうことがあった。

食べかけの蟹を、美味しいから食べてみなと渡された。

 

あの時の私は、少しためらった後、それを頬張った。

 

嫌悪感…という程でもない。

形にもならないような違和感。

気付かないふりをしようと思えば、出来る程度の感覚。

 

そんなことがあった。

それをルームメイトに、伝えた。

 

彼女は、とても引いていた。

ああ、これは普通ではないのか。

 

何で断らないのかと訊かれた。

特に、断る理由も無かったと返すと、彼女はとんと意味が分からないといった様子だった。

 

私は昔から、こういう感情や感覚に疎い。

嫌だとか、気持ち悪いとか、そういうのがよく分からない。

 

自分の感情より、その場の雰囲気とか求められる姿が重要視される。

 

私は、あの飲み会の場で、世間をよく知らない、初心で、純粋な新人の姿を求められていた。だから、その通りに振る舞っただけ。ただ、それだけなのだ。

 

 

しかし、田舎にいる時は問題にならなかった、そんな飲み方も、東京へ上京してからは何度もトラブルを起こす。

 

どうやら私の飲み方は、誘っているように見えるようだ。

 

最初は、私にそんなつもりはない!受け手側の問題だ!と高を括っていた。

 

 

しかし、人生で初めての彼氏が出来た時、かなり強めに怒られる。

 

その彼氏は、元々私の上司だった。

 

だから彼も、私の飲み方を十二分に理解していた。

なんならその人は、過去、私が媚を売る対象者だった。

 

ルームメイトから件の指摘があった後、私は彼に自分の飲み方について相談していた。

私は自分の考え方を改めるべきだろうか。

 

「そういえば、貴方は私と初めて飲んだ時、どうでしたか?」

 

気軽に、そんな質問を投げかけた。

彼は、少し躊躇いながら「正直に伝えていいの?」と訊いてきた。

もちろんだと返した。

何を躊躇うことがあるのだろう。

あの時は良い気分だったと、なんなら褒められると期待していた私は、彼の表情に困惑する。

 

そして、重い口を開いた彼の言葉はこうだった。

 

「正直あの時は、そういうことばっかりしてる、股の緩い子なんだと思ってた。

 

田舎なら、ああいう飲み方をしても、村社会だから…周りの目があるから酷いことにはならないだろう。でも、東京は人と人の繋がりが希薄だから、ストッパーがない。ホテルに連れ込まれても、文句は言えない。

 

君に悪気が無いのは分かる。

 

でも、気が触れてるとかじゃないなら、もうああいう飲み方はするな、二度と男の人と二人きりで飲むな」

 

 

予想外の返答にショックを受ける。

 

今まで、私は周りから貞操観念の狂った、気がふれた女だと思われていたのか。

素直で純粋な部下でいようと、振る舞った私の行為は、捻じれた形で相手に伝わっていた。

 

少なくとも、彼にはそういう風に思われていたのだ。

 

私は、それから飲み方を変える。

そもそも参加が強制でない場には、出席もしなくなった。