夢見た世界を手に入れた私たちは、次に何を望むのか
本来であれば帰宅部一択だった選択肢。
私の学校では、部活動への加入が強制だった。
そこで私は、活動頻度の少ない美術部への加入を決意する。我が校の美術部は、課題提出日までに作品を完成させれば、参加頻度は自由だった。
ほぼほぼ帰宅部の生活を実現し、家に帰ればゲームの日々を謳歌する。
当時は、これが最善の選択肢だと考えていたし、今も後悔まではしていない。
ただ、東京へ上京。会社へ就職し、地元や学校というコミュニティーから離れ、仕事場での「偽りの自分」という存在しか認められない世界で暮らしていると、ふと、素の自分が許されていた、あの頃がとても貴重だったように思える。
くだらない話で盛り上がっていた休み時間。
学校帰りにカラオケでアニソンを歌いまくった、テスト明けの放課後。
これから自分達は、どんな大人になるんだろうと、漠然とした未来予想図を描いた、あの夏の日。
学生時代は、東京のキラキラした生活に憧れていた。
流行りのファッションに身を包み、お洒落なカフェで、美味しいスイーツを食べること。
今、東京に上京した私は、学生時代に夢見た世界を手に入れられるようになった。
ただ、ここにあの頃の友達はいない。
多くの者は、日々の生活に忙殺され、そんな夢を抱けなくなってしまった。
両親も老いる。
あの退屈で平凡だった毎日が、今は恋しく愛しい。
もし高校生に戻れるなら、もう一度、あの時を生きたい。